プロ人材活用企業の過去・現在・未来
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製造業
企業DATA
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ハードロック工業
株式会社- 企業DATA
- 設立/1974年
資本金/1,000万円
従業員数/87人
本社/東大阪市
https://www.hardlock.co.jp/
新たな知見で社内体制を整え
世界中の「ゆるみ」解決へ
事業内容
振動や衝撃でもゆるまない特許技術で
社会の安全・安心を守り続けるナット
ゆるみ止めナットの代名詞ともいえる「ハードロックナット」および、派生商品の「ハードロックベアリングナット」「スペースロックナット」「ハードロックセットスクリュー」を製造・販売している。振動や衝撃によるボルトのゆるみを特許技術で解消したハードロックナットは、鉄道や建設機械、産業ロボット、鉄塔など安全性が求められる構造物に幅広く使われている。その市場は海外へも広がり、世界各国でのインフラ整備を陰で支えている。
企業紹介
改善を止めない発明少年が生み出したゆるみ止めナットの決定版
ハードロックナットの生みの親、1933年生まれの若林社長は子どもの頃からモノづくりが好きだった。10歳の時には疎開先の農家のために種まき機を考案。20歳で開発した万年筆用のインク瓶は実用新案権を取得し、大卒初任給が1万円に満たなかった当時に約30万円で文具メーカーに売却したという。その後、バルブメーカーに勤めていたある日、国際見本市で見かけたナットに魅せられ、ゆるみ止めナットの独自開発に身を投じるようになった。研究と開発の努力を重ね、生み出されたハードロックナットは、今やゆるみ止めナットの決定版として国内外で高く評価され、オンリーワンの地位を築いている。数々の発明から「東大阪のエジソン」の異名を持つ若林社長は、しかし、「この製品の完成度は60%」とさらなる改善への意欲を見せる。80歳を過ぎた現在でも、新しいアイデアを生み出しては自ら図面に起こしているという。
住吉大社の鳥居を支える「くさび」が世界の安全・安心を守るヒントに
ハードロックナットの技術を支えているのは「くさび」の原理だ。これは若林社長が住吉大社の鳥居を見ていた時に思いついた構造だという。通常、ボルトとナットの間にはわずかなすき間があり、それがゆるみの原因になる。ハードロックナットは2つのナットで構成されており、下の凸型ナットは少し中心をずらした偏芯構造になっており、これがくさびの役割を果たして2つのナットが完全に固定されるのだ。新幹線や東京スカイツリー、明石海峡大橋などに採用されていることからも、その締結力への信頼の厚さがうかがえる。社会インフラの安全・安心は、小さなボルトとナットによって支えられているのだ。
ナットではなく、
「安全・安心」を売っている
社員研修でコミュニケーションが
スムーズに
- 藤田
- 私はずっと電機メーカーで複写機の技術職を担当していて、2016年の4月にハードロック工業へ入社しました。その約1年後に須﨑さんが入られたんですよね。
- 須﨑
- そうですね。私が2017年2月の入社。それまでは大手の電機メーカーで、主にB to B系の商材の営業やマーケティング部門にいたんです。放送局に納入するようなビデオのシステムなど。最後の3年間は韓国の現地法人で経営にも携わっていました。
- 藤田
- ハードロック工業はネームバリューも大きいので、正直なところ入れるとは思っていなかったんです。前職とは毛色も違うので、自分が役に立てるかも不安でしたね。でも、今は品質保証を担当していますが、これは業種が違っても基本の考え方は同じで、手法が異なるだけ。だからスムーズに入れたと思います。
- 須﨑
- 私もナットの経験はありませんでしたが、面接時に「ナットどうこうよりも、ゆるみの問題で相談が来る」という話や、新規プロジェクトも多いという話を聞いたので、率直に面白そうだと感じました。前職でも新商品の路線をマーケティング目線で考えるようなことをしていましたので。
- 藤田
- 入社して少し意外だったのが、社員教育をやってくれたこと。中小企業ではいきなり現場でOJTというケースが多いのですが、2~3週間で各工程をひと通りぐるっと回って会社を全体的に把握することができました。おかげで現場に入ってからのコミュニケーションもスムーズでしたね。
- 須﨑
- 私の場合は同期入社が4人いたので、1ヵ月くらいかけて座学から工場での製造工程、展示会での営業などを経験させてもらいました。確かに、この規模の企業で手厚く社員教育をしてくれるのは、ありがたいですよね。
「ゆるむ」という悩みにモノで
応え続ける
- 藤田
- 須﨑さんは商品企画の部分を担っているので、いわば最上流にいらっしゃいますよね。私は商品がお客様に渡る直前の品質管理を担っているので、最下流にいます。この最上流と最下流を2人でうまくコントロールできれば、色々なことを改善できそうですよね。
- 須﨑
- そうですね。藤田さんは品質管理責任者という立場で仕組みづくりをされているので、そこに私が企画の立場から新しいルールを取り入れてもらうとか。お互いに協力して、より良い仕組みを築いていけたらいいですね。
- 藤田
- 日々、新しい相談が来ますからね。私たちも新しい商品や技術を形にする仕組みを考え続けないといけません。
- 須﨑
- 本当に相談は多いですね。ボルトのゆるみで困っているお客様がこんなに多いとは思ってもいませんでしたね。
- 藤田
- その悩みや、安全・安心への要求にモノとして応えられる立場にいるのは、ありがたいことですよね。ハードロックナットはほとんど完成している技術だと思われがちですが、まだまだ技術的にやらないといけないことはあります。新しく売り込める先や、今までにない活用法も。
- 須﨑
- 私も入社してみて「ここは、ただのナット屋じゃないな」と感じましたね。技術志向が強くて、改善や新規参入への意識が高い。社長から受け継いだ体質ですよね。
- 藤田
- そうですね。今でもアイデアをサッと図面に起こしますからね。豊富な経験と柔軟な発想を持ち併せているところがすごいですね。
- 須﨑
- お客様の相談を受けていて感じるのは、やはり私たちは「安全」に対する重大な責任を背負っているということ。ナットがゆるむということは、場合によっては命に関わる事故を引き起こします。そのリスクをなくすことに価値を見出していく必要がありますね。
- 藤田
- はい。「うちはナットを売っているんじゃない。安全・安心を売っている」と社内でも言われていますからね。そのマインドは受け継いでいきたいですよね。
- 須﨑
- 「ゆるむ」という悩みは全世界共通ですからね。いかにその悩みを聞き、それに対して的確なコンサルをするか。それを社長が実行してきたから今があるので、その伝統を守りながらステップアップしていきたいですね。
- 藤田
- ハードロックナットは42年前に作られたのですが、今でもオンリーワンのポジションにいる。それほどすごい発想だったんですよね。夢みたいな話ですが、それに並ぶ発明をしたいですね。それが一番の恩返しになると思います。
- 須﨑
- 素晴らしい夢ですね。でも、これだけ幅広いニーズがある製品なので、まだまだ挑戦できることはたくさんあります。これからも協力しながら、ハードロック工業の可能性を広げていきましょう。
プロ人材 インタビュー ①
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前職でやり残した人材育成で
会社のさらなる発展に貢献したい技術開発グループ グループ長
三好 範和さん
半導体のテストエンジニアを約30年務めた後、2016年3月にハードロック工業へ入社しました。前職では半導体を用いたさまざまなデバイスの開発から製造、購買などに携わり、営業以外の仕事は何らかの形で経験しています。そして、半導体とは異なる分野で社会貢献できる転職先を探していたときにこの会社を知り、社会の「安全・安心」を支えることにつながる仕事だと感じて興味を持ちました。面接で「力を貸してほしい」と言っていただいたことも心に響き、入社を決断しました。金属部品の業界は初めてだったのですが、特に不安はありませんでした。もともと、知らなければ知らないほど興味が湧くタイプなので、逆に楽しみでしたね。
入社当初、この会社の課題だったのは組織体制が整っていなかったことです。マーケットからの品質に対する要求が高まる中、それに応え続けるにはしっかりとした品質管理体制や教育システムを築く必要がありました。その部分では私が前職で培った部署の運営やマネジメントの経験が生かせると感じました。特に教育システムの整備には苦労していた上、私も前職で人材育成ができなかったのが悔いとして残っていたので、やりがいを感じています。人材育成によって、開発技術や品質保証、管理、購買など、あらゆることが改善していくので、これからも力を入れていきたいですね。
ハードロックナットは、知ってもらえれば必ず使いたくなるような製品ですので、マーケットはいくらでも広げられます。耐震補強などでのニーズも増えていますし、宇宙産業にも参入していけると思います。そのためにも組織体制の整備と人材育成は不可欠なので、これからもそこに貢献し続けていきたいですね。
プロ人材 インタビュー ②
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主体的、積極的な営業展開で
海外マーケットの開拓を加速海外営業グループ 主事
寺谷 徹さん
以前は大手電機メーカーのグループで海外貿易を専門に行う商社に勤めていました。そこで海外のODA事業など大規模プロジェクトの入札などを主に担当していたんです。大きな企業だったので、いずれ第一線から退くことになるのですが、まだまだ第一線で仕事をしたかったので転職することにしました。ハードロック工業については「これからすごく伸びしろのある会社だな」というのが第一印象でしたね。また、個人的に興味のあった航空宇宙産業への参入の可能性もあると面接で話を聞き、入社を決めました。
私が入社する前から海外取引はありましたが、全体の売上の2割ほどでした。市場としては海外の方が圧倒的に大きいので、これからもっと広げていきたいと考えています。もちろん、会社も海外取引の強化を期待して私を採用しているので、それに確実に応えていきたいですね。そのためには、現地の代理店に任せていた営業活動をもっと主体的に展開していく必要があると思っています。その足がかりとして、2017年にはそれまで取引の少なかったアメリカとオーストラリアでの展示会に初めて単独出展するなど、新しい試みにも力を入れています。まだまだ出荷先の地域も少ないので、受け身ではなく積極的に海外市場を開拓できる体制を整えていきたいですね。
海外で競争するためには、意思決定のスピードがとても重要です。弊社は90人規模の会社なので、中小企業の強みであるスピーディーできめ細やかな機動性を生かせると思います。せっかくオンリーワンのすぐれた技術と他社にはない実績を持っているので、中小企業ならではの機動性を発揮して、世界中のインフラに「安全・安心」を届けていきたいですね。
社内のリソースだけでは
難しかった社内体制の整備に
有効な人材を採用できました。
ハードロック工業 株式会社
代表取締役社長 若林 克彦さん
難しい課題にも立ち向かう気概が
社内を活性化させている
1974年の会社設立から40年以上が経ち、ありがたいことに弊社のハードロックナットは鉄道から高速道路、鉄塔などの建造物まで、幅広く利用いただいています。ご相談いただく内容も時代とともに変化し、近年では人工衛星・探査機などの宇宙産業や、インプラントなどの医療分野にも広がっています。ニーズが広がるとともに品質への要求も高くなっており、社内のリソースだけでそれを満たすのが難しい状況も生まれていました。プロ人材拠点を活用して新たな人材を獲得した背景には、このような状況があったのです。それまで自分たちの経験則で行ってきた品質管理や工程管理、人材教育などを組織化し、高まる世間からのニーズに的確に応えられる体制を築くためにも、外部のノウハウが必要でした。
新たに獲得した人材はいずれも大手の電機メーカーに勤めていた方ばかりで、やはり高度な知識とノウハウをお持ちです。人材を一から育て上げるのは時間がかかり、中小企業には難しいこと。プロ人材拠点を通じて採用した方々は即戦力として、我々のできないことを担ってくれていて、本当にありがたいと感じています。大手で鍛えられてきたためか、難しい課題にぶつかってもくじけず、乗り越えようという気概が感じられます。さらには年齢的にも「第二の人生に向けて立ち上がろう」という意識が強い。結果として、社内がとても活性化したと思いますね。
ありがたいことに、弊社には海外も含めてたくさんの企業から視察に来られます。また、小学生から高校生まで、幅広い年代の子どもたちが工場見学に来ます。世の中に「安全・安心」を提供する企業として、これからも弊社の製品をたくさんの人に知っていただきたいですね。そして、発明の素晴らしさ、楽しさも幅広く発信していきたいと思います。
※掲載の企業情報は取材時点での情報です